狼の群れと暮らした人間(実話)

 

狼の群れと暮らした男

狼の群れと暮らした男

 

 

子供のころに森に捨てられ、オオカミに育てられた話か?と思われた方もいらっしゃると思いますが、それとはまた違った話です。

 

表紙を見るや、おっ、面白そうだと思い手に取ってみたのですが、前書きのたった数ページで一気に惹かれました。ここでは、優しい一匹の狼と、知的な障害があり感情を表したことのない少年との間で、心が通じ合った瞬間が描かれています。イルカは、人間の心の傷を何らかの方法で読み取っているという話を聞いたことがありますが、狼にもそのような秘められた能力があるのかもしれない、と思いました。大きめの本屋が近くにある方は、ぜひ手に取って、まえがきだけでも読んでみてください。本書を象徴するような、心温まるエピソードです。

 

イギリス出身の筆者は、幼いころから犬やキツネなど、数々の動物に囲まれた生活を送っていたようです。その後北米に渡り、反対する周囲の人間を振り切って、ロッキー山脈に棲む狼たちの群れに一人で飛び込むことを決意します。当然山奥ですから、数々の危険を伴います。そして狼は警戒深くなかなか彼を受け入れてくれなかったようですが、彼は狼の鳴き声を聞き分ける能力を経験的に身に着けていたらしく、それによって徐々に群れとの距離を近づけていきます。

 

彼は、狼の群れに入るまでは、木の実を採るなどして食いつないでいたようですが、群れに入ってからは、狼が鹿の肉を(彼一人ではとても獲れないような)獲ってきてくれるなんてこともあったみたいです。ほかにも、狼の群れが彼を熊から守る話も出てきます。狼たちが、人間である彼を、群れの一員とみなしていたことがよくわかります。

 

久々に、良いノンフィクションに出会えました。少し読めば、あまり書き慣れたライターではないのだろうと予想がつき(翻訳者が悪いのか?)、そういう意味で少し読みにくい部分もありますが、気にならないくらい引き込まれました。